​​EC事業の設計とは?コンセプト・チャネル・体制・KPIの基本

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​​EC事業を成功させるには、単にECサイトを立ち上げるだけではなく、事業として成立させるための設計が欠かせません。とくに、損益設計・チャネル選定・体制構築・KPIツリーといった「意思決定のための設計プロセス」は、早い段階で整理しておく必要があります。

そこで本記事では、EC事業の土台をつくるうえで核となるこれらのポイントにフォーカスし、実務で活かせる形で解説していきます。

より基本的な内容を整理したい方は、先にこちらの記事をご覧いただくと理解が深まります。

目次[非表示]

  1. 1.EC事業の設計とは?
  2. 2.EC事業設計のステップ
    1. 2.1.1.コンセプト設計(誰に・何を・どう届けるか)
    2. 2.2.2.販売チャネル選定(自社EC/モール/D2C/越境EC)
    3. 2.3.3.リソース配分(内製と外注の仕分け)
    4. 2.4.4.KPI設計(売上・CVR・LTV・CACなど重要指標の設定)
  3. 3.売上規模別にみるEC事業の体制設計
  4. 4.「内製・外注」リソース配分の意思決定ポイント
  5. 5.まとめ:EC事業設計は「全体像と体制判断」がカギ

EC事業の設計とは?

EC事業を成功させるために最初に必要なのは、「どの市場で戦い、どの体制で運営し、どの指標を追うのか」を決める事業設計です。

これは、サイト構築や集客施策よりも前に取り組むべき、もっとも重要な工程です。

具体的には、次のような意思決定が求められます。

  • どのターゲットに、どんな価値を提供するか(顧客・商材戦略)

  • どのチャネルを選ぶか(自社EC/モール/D2C/越境EC)

  • 社内外のどのリソースで運営するか(内製/外注)

  • どこに投資し、どの指標で管理するか(KPIツリー)

  • 収益構造をどう最適化するか(粗利・CPA・物流費など)

EC事業の設計は、これらの項目が明確であるほど運用フェーズで迷いが減り、施策の優先順位も判断しやすくなります。

なお、前提として知っておきたいのが、国内EC市場がいまも拡大を続けているという事実です。

2024年の日本国内BtoC-EC市場は 26.1兆円(前年比+5.1%)、BtoB-EC市場は 514.4兆円(前年比+10.6%) と、いずれも成長基調が続いています。また、EC化率も BtoC=9.8%、BtoB=43.1% と上昇しており、取引のデジタル化は今後さらに進む流れにあります。

だからこそ、EC事業に取り組む際には「どの市場で戦い、どんな体制で運営するのか」を早い段階から設計しておくことが、競争力の差につながります。

次のセクションでは、EC事業の成否を左右するこの「ECの事業設計」をどの手順で進めればよいのか、EC事業設計の4つのステップを具体的に解説していきます。

出典:経済産業省『令和6年度電子商取引に関する市場調査「国内電子商取引市場規模」

EC事業設計のステップ

EC事業を軌道に乗せるためには、やみくもにサイト構築や集客に取りかかるのではなく、まず事業全体の設計を体系的なステップで組み立てることが不可欠です。

ここでは、EC事業を設計する際に押さえるべき 4つの基本ステップを紹介します。

1.コンセプト設計(誰に・何を・どう届けるか)

最初に明確にするべきは、顧客・価値・届け方の3つのポイントです。

  • 誰をターゲットにするのか
  • 何を価値として提供するのか
  • どうやって認知・購入につなげるのか

さらに競争が激しい市場では、差別化ポイント(なぜ自社の商品やサービスが選ばれるのか)を定義することが不可欠です。

コンセプト設計が曖昧なまま進むと、集客・広告・CRMなど後続の施策がすべてブレてしまい、投資対効果も上がりにくくなります。

【コンセプト設計のポイント】ターゲット/提供価値/差別化軸を先に言語化する

2.販売チャネル選定(自社EC/モール/D2C/越境EC)

販売チャネルの選択によって、集客方法・費用構造・顧客データの蓄積方法が大きく変わります。

どこを主戦場にするかが明確でないと、広告投資の配分やCRM戦略にも一貫性がなくなり、成果が出にくくなります。

代表的なチャネルの特徴は次の通りです。

チャネル

特徴

モール

集客しやすいが手数料が高い

自社EC

顧客データが蓄積し、ブランド育成向き

D2C

世界観・ストーリー訴求に強い

越境EC

海外市場を狙えるが運営コストが上昇

チャネルごとにメリット・デメリットを理解し、「どの市場で勝てるのか」から逆算して選ぶことが重要です。

とくに中小企業の場合は、モールで初速を作り→自社ECで育成する二段構え構造が成功しやすい傾向があります。

【チャネル選定のポイント】勝てる市場の見極め/チャネル特性と費用構造から主戦場を決める

3.リソース配分(内製と外注の仕分け)

EC事業は、商品企画から受注処理、広告運用、カスタマー対応まで、多岐にわたる業務が同時並行で発生します。

以下を基準に 内製する業務と外注する業務を明確化する必要があります。

内製すべき領域(事業のコアとなる領域)

事業の差別化ポイントになるため、社内で意思決定できる体制が不可欠です。

  • 商品企画・MD

  • ブランド企画

  • 価格戦略

  • 顧客体験の方針設計

外注しやすい領域(専門性と再現性が求められる領域)

「ルール化しやすい/工数が多い」業務であり、外注することでコスト削減・スピード向上が期待できます。

  • 受注処理・CS

  • 広告運用

  • 商品撮影・制作

  • 物流(フルフィルメント)

リソース配分の最適解は企業によって異なりますが、共通するポイントは 「自社の強みが発揮される領域を内製」し、それ以外は「外部の専門性を活用する」 という考え方です。

【リソース配分のポイント】「内製(事業のコア領域)」と「外注(定型・専門業務)」の最適バランスを見極める

4.KPI設計(売上・CVR・LTV・CACなど重要指標の設定)

EC事業の売上は、次の4つの要素に分解して考えることができます。

<売上の構造>

売上 = 集客数 × CVR(購入率) × 客単価 × リピート率

実務では、多くの企業がまず月次の売上を確認し、次のような内訳を順にチェックしているはずです。

  • どれだけの人が訪れたのか(集客数)
  • そのうち何%が購入したのか(CVR)
  • 1回の購入でいくら使っているのか(客単価)
  • 既存顧客がどれくらい再購入しているか(リピート率)

このように売上を構造的に分解して確認することで、「売上が伸びない原因を短時間で特定し、どこに投資すべきかを迷わず判断できる」 という大きなメリットがあります。

たとえば、一般的には次のように解釈できます。

  • 集客が十分 → CVR改善が最優先
  • CVRが高い → 客単価やリピート施策へ投資
  • 客単価が頭打ち → セット販売・アップセルが効果的
  • リピート率が低い → メルマガなどCRMに注力

このように、売上を構造的に考えると 改善すべき領域を論理的に特定でき、施策の優先順位づけが格段にしやすくなります。

【KPI設計のポイント】売上を「集客×CVR×客単価×リピート率」に分解し、改善すべき領域を構造的に特定

KPIついて、詳しくはこちらの記事もお読みください。

売上規模別にみるEC事業の体制設計

EC事業では、売上規模に応じて必要な体制や外注活用の比率が大きく変化します。まずは、自社のフェーズに対して「どの程度の人員・役割が必要なのか」を把握することが重要です。

ここでは、年商規模ごとの典型的な体制イメージを示しながら、成長フェーズごとに求められる運用観点を整理しています。

この把握ができていると、次章の 「内製と外注のリソース配分判断」 をより正確に行えるようになります。
続いて、以下の表で売上規模別の代表的な体制モデルを見ていきましょう。

売上規模

体制の特徴

優先すべきポイント

〜1億円

少人数・兼務体制

標準化/外注活用/運用効率化

1〜10億円

分業化が始まる

広告最適化/CRM強化/内製×外注

10億円以上

専任部署・OMO・高度化

データ基盤/自動化/多チャネル展開

以上の体制早見表はあくまで全体像の目安ですが、実際の現場ではフェーズごとに「どこへリソースを集中すべきか」「何を外注すべきか」が大きく変わります。

そこで、各売上フェーズで優先すべきポイントを以下に補足します。

  • 年商1億円未満:兼務中心の最小体制
    少人数で複数業務を同時に回す必要があるフェーズ。
    まずは 受注処理・CS・レポートなど、標準化しやすい業務を外注化 し、属人化を防ぐことが安定運用の第一歩。

  • 年商1〜10億円:分業化が始まる成長フェーズ
    広告・CRM・制作の業務量が一気に増えるため、「広告最適化」と「リピート率向上」が最優先領域。
    制作や運用の分業を進め、外注と内製のバランス調整が「成長の壁」突破のポイント。

  • 年商10億円以上:専任部署・OMO・データ活用フェーズ
    EC運営は全社的な拡張フェーズへ。 データ分析・自動化・OMO展開(店舗×EC統合)が中心施策。
    専任人材と外部専門チームのハイブリッド体制が最も効率的で、事業拡張の基盤構築が求められる。

EC事業の基本についてはこちらの記事もお読みください。

「内製・外注」リソース配分の意思決定ポイント

売上規模別の体制設計では、外注活用のポイントがいくつか登場しました。体制が見えた次のステップは、「どこまでを内製し、どこからを外部に任せるか」 を判断するプロセスです。

この判断は企業の状況によって異なりますが、一般的には次の3つのポイントで整理すると迷いが減ります。

【内製・外注の判断基準】

  1. 事業のコアかどうか
    商品企画・ブランド方針など、社内調整が必要な「価値の源泉」は内製

  2. 費用対効果
    (人件費 vs 外注費 vs 成果スピード)
    専門性が高い広告運用や制作は外注がスピーディ

  3. 成長フェーズ別のリソース配分
    (立ち上げ/成長/拡大)
    立ち上げ期は外注比率が高く、成長期は内製化へ

このようにフェーズごとの方針を明確にすると、「誰がどの業務を担うべきか」 が判断しやすくなり、リソース投資のムダを防ぐことができます。

BPOについてはこちらの記事もお読みください。

まとめ:EC事業設計は「全体像と体制判断」がカギ

EC事業を成功に導くうえで最も重要なのは、市場・チャネル・体制・KPI・リソース配分 といった事業全体の構造を最初に明確にしておくことです。

「誰に何を提供し」「どのチャネルで戦い」「どの体制で運用し」「どこに投資するのか」この「全体像の設計」が定まっているほど、運用フェーズで迷いが減り、施策の優先順位も判断しやすくなります。

加えて、EC事業には企業の成長段階に応じた最適な戦略があります。立ち上げ期は仕組み化と外注活用、成長期は広告・CRM強化、拡大期はデータ活用や多チャネル展開など、フェーズごとに注力すべきポイントは変化します。

つまり、

  • 全体像の設計(事業設計)

  • 体制構築とリソース判断

  • 事業フェーズに応じた成長戦略

この3つが揃ってはじめて、EC事業は継続的に成長できるビジネスになります。

本記事が、貴社のEC事業を見直し、次のステップへ進むための指針となれば幸いです。

オンサイト株式会社は、EC事業の設計から運用・改善までを一気通貫で支援する企業です。これまで多数の企業様のEC立ち上げ・売上改善・体制構築をご支援してきました。

  • 事業設計(ターゲット・チャネル選定・KPI設計)

  • EC運営体制の構築(内製・外注の最適配分)

  • 実務支援(商品登録・受注処理・広告運用・CS など)

  • ECコンサルティング(戦略立案・改善ロードマップ作成)

とくに、「自社のECはどの方向に伸ばすべきか明確にしたい」「体制構築や外注・内製の判断に迷っている」「EC事業の設計から一緒に伴走してほしい」といった課題をお持ちの企業様はぜひご活用ください。

貴社の事業フェーズに合わせて、最適なEC戦略と体制をご提案いたします。

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